JR西日本は、2023年6月30日(金)からの大雨の影響で現在も運転を見合わせている美祢線の全線と山陰本線の一部区間について、現時点で把握している被災状況と今後の見通しを明らかにしました。
約150か所の大雨被害で運転見合わせ続く
梅雨前線の南下に伴い7月1日(土)にかけて線状降水帯が発生した山口県では、場所によって短時間に記録的な降水量を記録し、山口県や美祢市などでは人的被害も発生しました。県内の鉄道施設にも大規模な被害が発生しており、JRは被災の状況や原因の調査を進めてきました。
美祢線では、湯ノ峠駅(山陽小野田市)〜長門湯本駅(長門市)間の約37kmの区間に80か所の被災が確認されました。四郎ケ原駅〜南大嶺駅間に架かる「第6厚狭川橋りょう」が流出しており、ほかの橋りょう1か所も損傷を受けています。路盤となる盛土やバラスト(敷石)の流出も多く発生しています。
山陰本線の長門市駅(長門市)〜小串駅(下関市)間、約51kmの区間でも69か所で被災が認められました。長門粟野駅〜阿川駅間の「粟野川橋りょう」では、大雨がもたらした土砂災害によるものと見られる橋脚の傾斜が発生しています。
現在、美祢線の厚狭駅〜長門市駅間と、山陰本線の長門市駅〜小串駅間で列車の運転が取り止められ、当分の間はバスによる代行輸送が行われます。
(大雨被害により不通となっている美祢線、山陰本線の周辺路線図、被災箇所の写真など詳細は下の図表を参照)
美祢線は13年前にも大雨で橋りょう被害
美祢線の被害の多くは、二級河川である厚狭川の水位上昇や氾濫によって引き起こされたとJRは想定しています。厚狭川に架かる、流出を免れたほかの6つの橋りょうを現地調査したところ、橋桁にまで至る水位上昇を確認できたとしています。
美祢線では、2010年(平成22年)7月の豪雨の際、今回とは別の橋りょうが流出するなどの大規模な被害を受けています。厚狭川を起因とした災害が続いたことを受けてJRは、橋りょうの復旧だけでなく、厚狭川全体の河川計画を河川管理者である山口県に検討してもらう必要があるとの考えを表明しました。
前回の豪雨被害を契機に、沿線自治体が主体となって美祢線の需要創出に取り組む「美祢線利用促進協議会」が2010年9月に発足しました。しかしながら、2021年度における美祢線の輸送密度は1日あたり366人で、JR発足時から約8割も減少し、存続が危ぶまれる水準となっています。
JRは今回の被災前から、地域交通における美祢線の役割についての議論を始めるよう、協議会を通して沿線自治体に要請してきたところであるとしています。
このような現状を踏まえ、厚狭川全体の河川改修など沿線地域の防災強度向上が優先事項であるとの認識のもと、その検討への対応を行っていくとしています。今後の進め方については、県など関係自治体にまず相談したいとの立場を強調し、復旧の可能性についての言及は避けました。
一方の山陰本線は、粟野川橋りょうの被災メカニズムや構造物の詳細について、専門技術者によるの調査・分析を引き続き進めていくとしています。その結果はまとまり次第報告するとのことで、現時点での見通しはまだ立っていません。